護法之書
密着!清浄24時! 清浄の朝は遅い。早寝早起きとイメージされる方も多いかもしれないが、朝は遅い。何故なら彼はかなりの低血圧で、目覚めても動き出すまでに時間がいるからだ。 やっと床から出てきてもしばらく椅子に座ってぼーっとしていたりする。そんなところで誰かが騒いでいると…。 「静かにしてくれませんか!」 これで完全に覚醒するが、誰もが怒られる役を拒否するので清浄の部屋の周りは常に静かだ。余談だが、清浄の部屋は低血圧の彼のために他から離されている。 そしてやっと部屋を出てきても無言無表情で歩いていると、皆寝起きと判断して声をかけない。八童子内には『寝起きの清浄に話しかけるくらいなら虎と対峙した方がましだ』という言葉が存在しているほどだ。もちろんそんな言葉を作ったのは制多迦だ。 清浄が読書をはじめると、覚醒済みと判断して皆普通に談笑し出す。不動明王の宮は清浄を中心に回っていると言っても過言ではない。 「お茶でもどうです?」 清浄がいつものように慧光に声をかけたが、今日はこれから仕事があるらしく断った。 「それでは、矜羯羅、いかがですか」 「いいですね」 矜羯羅がにっこりと賛同すると、こういう時だけ耳がいい烏倶婆哦が激しく反応した。烏倶婆哦が一緒に行きたそうにしているが、大抵清浄は無視していく。無視しておいても勝手に部屋に座っていたりするのだが。 清浄が茶をたてている部屋には矜羯羅と呼ばれてもいない烏倶婆哦が正座している。この部屋では足が痺れても静かにしていなくてはならない。さもなくば、この部屋を管理する清浄からの鉄拳(拳を使っているのを見たことはない)が飛んでくる。 清浄から受け取った茶碗を回し、一口飲むと矜羯羅が微笑んだ。 「結構なお手前で」 そしてまた茶碗を回し、烏倶婆哦の前に置く。烏倶婆哦も見よう見まねの作法で茶碗を回し、一口飲んだ。 「苦っ」 「烏倶婆哦」 烏倶婆哦の前に鎮座する清浄が笑っている。 「は、はい!なんでしょう!?」 「お茶を飲んだら一言褒めるものですよ」 「え?でもこれ苦…」 この後はいつもの展開なので飛ばすとしよう。 お茶をした後は基本的に慧喜を相手に碁を打ったりするのだが、慧光とともに仕事で今日は不在だったため日がな一日読書にあけくれていた。 そして日が暮れ、星ぼしが瞬き出してしばらくしてから清浄は就寝する。寝るのは早い方だ。 今日一日、清浄の生活を追ったが、いつも彼が寝てばかりいるわけではない。 不動明王に調べ物を頼まれれば徹夜で文献を紐解き、必要な部分を別の紙にまとめたりするのだ。清浄本人によれば一週間なら不眠不休で仕事ができるそうだ。ちなみに書庫から書物を探し出すのは目のいい烏倶婆哦が役にたつのでよく手伝わされている。 場合によっては数日連続で徹夜をしてすぐに戦うような類いの仕事をしたりもする。 年の半分はこのように徹夜をして過ごすことになるので、寝ているように見えて実は八童子の中で清浄が一番寝ていない。 「こんなものか…」 書き終わった物を見直して満足げに頷く。 静かに扉を開ける音がして振り返るとたった今帰ってきたらしい慧喜が顔を覗かせていた。 「まだ起きていたのか、阿耨達」 一言断りを入れてから中に入ると、慧喜は阿耨達が今まで書いていた物を眺めて、眉間に皺を寄せた。 「また書いていたのか…。よく飽きないな」 「まあね」 「清浄の一日など追っていてもつまらないだろうに。今度は明王様の一日でも追ってみては?」 「それもいいかもしれないな」 本気でやるのかと呆れ顔で、慧喜は部屋を出て行こうとした。しかし、何か思い出したのか振り返って、まだ紙面に向かっている阿耨達に言った。 「早く寝ろよ」 思いついたら書きたくなっちゃったんだ。清浄の低血圧設定。 てか指徳だけちらりとも出てきてない。書き手が阿耨達だからかもしれない。 |