10.一部始終
「さっさと吐け!」 「ネタは上がってんだ!!お前の犯行は一部始終店の防犯カメラに映ってる!!」 バンッと大袈裟なほど音を立てて机を叩いた。ついでとばかりにもう一人の刑事が容疑者の椅子を蹴る。 容疑者…役のくまのぬいぐるみが地面に転がった。 「てめぇら何やってんだ…?」 低い静かな声でこのクラスの担任である筑前が聞く。 「何って見れば分かるでしょう?文化祭でやるクラス演劇の練習ですよ」 「………それが?」 「そうですよー。あ、ちなみに本番とリハーサルの時は容疑者役が先生です。今はくまさんが代役ですけど」 下っ端刑事役の男子がくまのぬいぐるみをボフボフ叩く。 筑前先生の眉間にシワが寄った。 「それで許可出せると思ってんのか…?」 「えー。青少年の犯罪を撲滅するいい内容…を目指したいい話ですよ」 「そんなんで犯罪がなくなるなら警察いらねぇよ。しかも目指してるだけってわかってんじゃねぇか」 「高校生の劇なんてそんなもんですって。自分達が盛り上がれれば満足です」 「自己満足で終わらせるなって言われてんだよ。こっちは」 「そんなの先生が破ってくださいよ。得意でしょう?」 筑前先生がニヤッと笑った。カチッと音を立てて何かを操作する。テープレコーダーのようだ。 「今の言葉一部始終生活指導に報告するぞ」 「すいませんでした!!」 もうこの人教師じゃないと思う。 |