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2.うたたね


「お腹空いてるとホントご飯がおいしいよね」
 しみじみと隣で言われた。
 どんだけ腹減ってんだよ。思ったが口には出さない。それでも気配で気がついたのか幼馴染はキッとこちらを見る。
「なんか文句ある?今日は朝も抜きだったの!!いいわねぇ。毎朝お母さんが朝食作ってくれる家庭は!」
「だったらお前も朝からうち来ればいいじゃんよ。母さんからしたら4人も5人もたいして変わんないだろ。むしろ弁当も作ってんだから大歓迎してくれそうだ」
「一応あたしにもけじめってもんがね…ふぁぁ」
 軽く目を閉じてこすり始める。
「朝飯抜きでいるからじゃねぇ?」
「うるさい。昨日寝たのは今日だったの…」
「それ日本語として…」
「うるさい。あー…もう無理。肩貸して」
「へ?」
 俺の怪訝な声に対する答えはなく、ささっと幼馴染は俺の肩に頭を載せて寝始めてしまった。
 こんなところで寝るなよ。あんまり人目にはつかないけど、ここ学校の校庭横だぞ。
 言いたいけど、もうかすかな寝息が聞こえてきた。いつだってこいつには頭があがらない。うーん…。これが彼女なら可愛いしぐさに入るのかもしれないけど、こいつだしなぁ…。可愛くない顔とか知りすぎてるしなぁ…。むしろ怖い部類だな…。
「らぶらぶー!!」
「ヒューヒュー!!」
 同じ部活のやつが囃し立てながら駆け抜けていった。
「お前らっ…!!」
 追いかけて殴って黙らせようと思ったが、この状況じゃ動けなかった。そもそも俺の肩使ってるこいつが悪い。
 むかついたがあまりやると俺がぼこられるから、寝ているこいつの頬をつついた。
 あ、意外と柔らか…。
「うざい…」
 寝言らしきものが聞こえてきて、俺はそのまま昼休みが終わるまで動けなくなった。




2009年9月16日


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