犀雅国陸軍軍事記録
第11話 仁慈なき戦い前編 ある日大佐はいつものように突然大総統に呼び出された。朝比奈大佐は愛剣ビクトリアを再び大総統に取り上げられたショックで萎れていて、呼び出されても無視しようと思っていたが中尉に銃を向けられたので仕方なくやってきたのだった。 「平穏すぎて面白いことを探しているのだよ」 相模大総統は開口一番こんなことを言った。大佐は平穏!?この間マフィアの危機を脱したばかりなのに!?と心の中でつっこんだ。首を切られたらたまらないので心の中で。 「はぁ」 「そこで面白いことを思いつきました。聞きたいですか?」 「……」 「聞きたいですよね。いいでしょう。新旧武将対決をしましょう。ということでがんばってください朝比奈大佐」 「はい。え…えぇ!?」 「相手に参りましたと言わせたら終了ですから命の危険はありません。当日がんばってください」 そして大佐は大総統に文句を言う暇も与えられずに部屋から追い出された。 対決の日がやってきた。 大佐は対決の相手が誰か知らないまま中尉に拉致されてきていた。 「一体誰と戦えというんですか…?」 「秘密です。大総統の命令ですから」 「対決というからにはビクトリアを返してくれるんですか…?」 「危険なので返さないという条件になっています。銃を使ってください」 大佐はその場で固まってしまった。 「どうかしましたか?」 「銃なんか使ったら死ぬじゃないですか!私が!」 「大佐に銃の才能が全くないのは知っていますが大総統の命令ですからあきらめてください」 そこへどこからともなく白衣の悪魔こと三浦一等軍医正が現れた。手には小さな粒の入ったビンと水が入っているのであろうペットボトルを持っている。 「あ、いたいた。朝比奈大佐。いい物持ってきたんです」 「な…なんですか…?」 「これから対決なんですよね?大佐を勝たせてあげようと思ってまだ試作段階で世に出回っていないこの筋肉増強集中力アップ間違いなしのA錠剤とB液を持ってきたんです。これはA錠剤をB液での見下し体内で混ぜ合わせて血液中の赤血球を刺激し一時的に酸素の運搬量を増やすことによって筋肉の運動量と集中力を上げるはずのすばらしい薬です」 『はず』って!!こんなところでも実験台ですか!? 「…いえ。私より対戦相手にあげてください…。私と対等になるように…」 「あら。そうですか?じゃあむこうにあげてきますね」 そういうと軍医はパタパタと走り去った。 「哀れ対戦相手。これで相手が動けなくなって対決がなくなるといいんですが…」 「無理ですね。相手があの人ですから」 中尉は左腕につけた時計を見て言う。 「あ、もうこんな時間。大総統から別の仕事を頼まれているので。それでは」 柳中尉は走り去ってしまった。 「それではって…。私はどうすればいいんですか?」 大佐がぼやいているとさっき中尉が消えた方向から大総統付き秘書官である東野大尉がやってきた。 「東野大尉。大総統は一緒じゃないんですか?」 「はい。大総統はもう特等席に座って始まるのを待っていますよ」 「特等席に…。大尉は何をしにきたんですか?」 「入場口までの案内係ですよ」 大尉に連れられて入場口までの長い道のりをとぼとぼと歩いていった。 対決の会場は血の気の多い軍人で満員だった。彼らは入場してきた大佐に野次を飛ばしてきた。 「さっさと昇進しやがって!」 「俺の給料上げろ!」 「キャー!!大佐かっこいいー!」byオカマ 「お前に大佐はにあわねぇ!」 「三浦軍医は俺のものだ!!ベタベタすんじゃねぇ!!」by新人で白衣の悪魔の本性を知らない人達 「この殺人鬼が!」 などなどいろいろな野次を飛ばしてきたが大佐は口元にだけ笑みを浮かべて静かに言った。 「野次飛ばしてるやつ全員軍事裁判にかけるぞ」 大佐に向けられた野次はぴたりとやんだ。 一方対戦相手に向けられた野次はますばかり。 「肉ばっか食ってんじゃねぇ!」 「貸した金返せ!」 「肉返せ!!」 「お前が壊した机弁償しろ!」 「入院費出せ!」 「給食費出せ!!」 「ジゴクニオチロ」by外人 「白衣の悪魔の餌食になっちまえ!」 「死ね!!」 対戦相手が業を煮やして吠えた。 「うるせぇ!!お前ら観客なら静かに見てろ!」 対戦相手が近づいてきた。その対戦相手は…。 「う、上田!?」 「た、大佐!?」 上司と部下による戦いが今始まろうとしている。 どうでしょうか?友人につまらないと言われた前編です。(でも白衣の悪魔の薬の説明は面白かったそうです。)その友人は後編を読んだら大爆笑だったようでやっぱり前編はあのぐらいでいいやといっていました。所々色が違うのはその友人から前編が帰ってきたときに書き加えられていたものです。あえてそのまま載せさせていただきました。 大佐と上等兵によるバトルは一体どうなるのか!後編へ続く。 |