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犀雅国陸軍軍事記録
第14話 最後の晩餐!?


「大佐、大変ですよ」
 柳中尉が紙を見ながら言った。デスクに座る大佐を見張るようにしてソファで仕事をしていたのだが、第三部隊宛に電報が届いたのでそれを読んでいたのだった。
「大変て何が?」
「落ちました」
「だから何が!?」
「飛行機が」
「…すいませんが柳中尉、主語述語をしっかりと備えた文体で私にもわかるように説明をしていただけませんか…?」
「馬鹿な大佐にも分かるように説明しますと、先日、南との戦争に備えて送った陸軍第三部隊の20人と飛行機のパイロット以下5人を乗せた飛行機が相模大総統の不戦争宣言の連絡を受けた直後にエンジントラブルを起こし飛行機に乗っていた全員で脱出しようとしていたのですがパラシュートが20個しかなかったので5人だけ飛行機にとどまっていたそうです。5人を乗せたまま飛行機は風に流されてしまったのでどこに落ちたか分からないということです。その5人は上等兵1名、一等兵3名、二等兵1名だとパラシュートで脱出し、海軍の船に助けられた兵長以下20名が言っています」
「20人の中に上等兵は一人だったから…上田ですね。だったら大丈夫でしょう」
 朝比奈大佐は明るく笑い飛ばした。






「…なんでこんなことになってるんだ…?」
「降伏したからです。上田上等兵」
 上等兵たち5人は今、豚を丸焼きにする時のように手足を一本の棒に縛り付けられ、食人族が棒の両端を方で持ってジャングルの奥へ奥へと運ばれていた。
「もしかして俺ら食料っすかね?」
「もしかしなくてもそうだろうよ」
「せっかく海に着陸して助かったのにさ」
「これも運命かねぇ」
「そもそも朝比奈大佐が悪い!俺たちを戦場に送ろうとするからこういうことが起きるんだ!」
 5人全員が快活に笑う大佐を思い出していた。
「俺たちが死んだら大佐のせいだ!」
「そうだ!」
「死んだら大佐のことを呪ってやれ!」
「おお!」
 5人で盛り上がっていたら食人族に槍を向けられた。






「へっくしょん!!」
「大佐、うるさいですよ」
「くしゃみは止められないんであきらめてください。それにしても…風邪はひいてないと思うんですけどねぇ」
「上等兵たちが大佐の悪口言ってるんじゃないですか?」
「…ありそうでいやです」
「上等兵たちは生きてるんでしょうかね?」
「上等兵以外は生きていてほしいですね」
「上等兵以外っていうのは無理でしょう。上等兵はゴキブリ並の生命力ですから」
 大佐は深くため息をついた。
「そろそろ昼食にしましょうか」
 中尉がそういうと大佐は軽くうなずいた。
「これ…なんですかね?」
 上田上等兵たち5人は食人族の村も広場らしき所(骨が大量にころがっている)で大量の食べ物の前に座らされていた。
「俺たちメインディッシュの添え物…?」
「いーやーだー!まだ死にたくない!!」
 5人が騒いでいると食人族の一人がやってきて上等兵の口を開けさせ、並べてあった肉を口に突っ込んだ。槍を構えられ、食べろと言われているようなのであまり食べたいとは思わなかったが、口の中の肉を噛み出した。血の味が口に広がる。
「…上等兵…それ人の肉では…?」
「いや。人じゃない。血抜きがされていないヤギ肉だな」
「よく分かりますね…」
「普通分かるだろ?」
 普通の人はそこまで完璧に肉を判断できないだろうよ…と二等兵は口に出さずに考えていた。
 食人族は5人の口を開けては食べ物をつっこんでいった。どうにもここにある食べ物は添え物ではなく、5人に食べさせるための物らしい。
「何で食べさせられるんでしょうかね?」
 自らヤギ肉をとって食べていた二等兵が肉を両手で持ちに口もすでにいっぱいのお肉大好き上田上等兵に聞いたが、もぐもぐと声にならない状態で答えは得られなかった。
「昔、こういうサバイバルの映画を見たときにも食人族が主人公たちにものを食べさせるシーンがあったんですよ…」
 4人が口をいっぱいにしている横で二等兵が語りだした。
「主人公は不思議に思いつつもお腹が減っていたので食べるんです。お腹がいっぱいになったところで、それまで優しく接していた食人族が急変して主人公たちを縄で縛り火であぶろうとするんです。食べ物を与えて太らせてから食べようと思っていたんでしょうね」
 二等兵の話を軽く聞き流して一服ついていた4人は何かが焼けるにおいがして辺りを見回した。彼ら5人が座っているところから50mほど先で炎を焚き、食人族が踊り狂っていた。
「映画のままだなぁ」
 二等兵がのんきに言った。
「俺ら食われるの!?」






 昼時。朝比奈大佐と柳中尉は総司令部の大食堂にいた。
 大佐はB定食中尉はスペシャルランチを頼んで待っていると出てきたのは…両方焼き魚定食だった。
「これ間違ってませんか?」
「B定食とスペシャルランチでしょう?あってますよ」
「何で両方同じもの…」
「見た目に騙されちゃいけませんよ」
 どうやっても料理人は折れてくれそうになかったので二人はあきらめて席に座った。
 箸を手に取り食べようとすると中尉がひょいと焼き魚を大佐の皿にのせた。
「中尉…何してるんですか」
「魚嫌いなんです」
 大佐は深々とため息をついた。
「こういうときに上田がいると便利なのに…」
「違いますよ大佐。上田がいたら大佐の分まで食べられますよ」
「…いなきゃ不便でいたら邪魔なのが上田上等兵…。分かりました。中尉の分の焼き魚も食べましょう」
 そういうと大佐は焼き魚を箸で一口大に切り、口へと運んだ。
「そういえば大佐。その焼き魚、白衣の悪魔の新薬が入ってますよ」
 中尉がそう言ったのは大佐が魚を飲み込んだ後だった。
「…はい?」
 中尉は無言でドアの方を指差した。そこには白衣を着た三浦軍医がこっちを見てにっこりと笑いながら立っていた。
「大佐。仕事は解放されてからまとめてやっていただければ結構ですから」
 大佐は恐怖からなのか軍医の新薬の影響なのかその場で卒倒した。













 今日だけで犀雅国を二本仕上げました。もういや。疲れた。あ、後書きじゃなくなってる気がする。
 そういえば柳のためにこのラストの昼食の話をメールで送りました。今回書く際、そこだけは下書きを紙に書きませんでしたよ。いつもは紙に手書きで書いてからパソコンで清書するんですがね。
 上田にもまだかと言われましたし、急ピッチで書き上げました。これで満足かやろうども!!一日に二作の大変さを知ったぜ俺は!
 じゃあ次回予告です。
 上等兵を含めた第三部隊の5人VS食人族!?そして上等兵が死ぬ!?作者が思うに上等兵がいなくても犀雅国は普通に進められるぜ。一方第三執務室に謎の男登場!?斉刻の孤狼が再び目覚めるか!?
最近「!?」を使う回数が増えました。







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