犀雅国陸軍軍事記録
第16話 恐怖の代名詞 玄関に向かっていた孤狼は突然眼鏡をはずした。後を追っていた中尉は胸ポケットに眼鏡を入れている孤狼を見て驚いた。 「レンズは割れてますけどかけてないと見えないんじゃないですか?」 「これは伊達だ」 「……!?」 「そういえば朝比奈大佐が二等兵だったときは眼鏡はかけてなかったわね」 「本当ですか!?何でかけてるんですか!?」 「これ曰く眼鏡をかけていたら頭が良さそうに見えるからだそうだ」 …すいません。ダメさしか表せていませんでした。中尉は心の底から大佐を哀れんでいた。 三人が玄関に着くと丁度その時ジープが何台か入ってきた。ジープが停止するとそこから第三部隊の20人が出てきた。 「朝比奈大佐!ただいま戻りました!」 兵長の声に合わせてみんなが敬礼した。それに対して大佐、否、斉刻の孤狼はただ無感情な目を向けただけだった。 「大佐?」 「あれ?眼鏡は?」 「え?」 「眼鏡かけてない」 「眼鏡…」 「眼鏡」 孤狼が20人に蔑みの目を向けた。20人はやっとこれが大佐ではないのではないかということに気がつき、押し黙った。 「この中で長は誰だ?」 「私です」 兵長が一歩前に出てきた。孤狼は兵長を下目に懸けて静かに言った。 「部下の五人は一体どこにいる」 「えっ…飛行機とともに海に落ちたと思われますが…」 「何故部下五人が残ったんだ?自ら志願したのか?」 「いえ…じゃんけんで彼らが負けたので…」 「お前が残ろうとは思わなかったんだな?」 「…はい」 兵長が小さく答えると孤狼は懐に手を入れ、短剣を取り出していきおいよく兵長に向かって振り下ろした。中尉は腰の銃を抜いて短剣を止めようとしたがとても間に合いそうにない。 兵長が死ぬと覚悟し、目を閉じた。しかし、剣が刺さる感覚はいつまでたってもなかった。ゆっくりと目を開けると目の前は真っ白だった。目が見えなくなったわけではない。三浦軍医の白衣だった。 軍医は短剣が振り下ろされた瞬間、すばやく孤狼と兵長の間に移動し短剣を左手の人差指と中指で挟んで止めていた。 「何故殺そうとしたんですか?」 「部下を犠牲にして自分が生きて帰ってくるようなものは軍に必要ないと判断したからだ」 「自ら手を下す必要はないでしょう?」 孤狼は不敵に笑った。 「軍事裁判にかけろと?」 軍医は首を振って優しく微笑んだ。 「いいえ。どうせ捨ててしまう命なら…ぜひ私の実験に!!」 すごく常識人に見えた軍医は一体どこに…。中尉は頭を抱えたくなった。 白衣の悪魔と斉刻の孤狼には命が惜しければ関わらないほうがいいと20人は深く心に刻んだ。 本気でおびえる兵長の肩を叩いて中尉が言った。 「今日はもう帰っていいですよ」 助かった!!と言わんばかりに20人はものすごい速さで帰っていった。 中尉は孤狼の方を向くとため息をついた。 「孤狼ももう帰ってください(いると邪魔なので)」 孤狼はかすかに眉をひそめたが中尉の言うとおりに帰っていった。 最初は次の作品と合わせて一作の計算だったのですが、俺の予想以上に長くなりまして…。分裂させました。 そうすると当たり前のようにあとがきも多くなり、次回予告も多くなる…。 それよりもかなりくだらないところで切ってしまった気がしないでもない…。まぁ所詮コメディですし…。今回の落ちは中尉かな?本来だと落ちのない感じの展開で切ろうとしてたんですがね。 そんなこんなで次回予告。 斉刻の孤狼が第三部隊を指揮すると…危険な状態になりますよね。そして当たり前のように残業続きで機嫌の悪い中尉のもとにあの人がやってくる!?大事件の予感もしだす犀雅国陸軍軍事記録「破壊の後の…」をこうご期待! ところで大佐はいつ戻ってくるんでしょうかね? |