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犀雅国陸軍軍事記録
第22話 ミッション・インポッシブル…ではない


「柳中尉ー」
「なんですか?」
「俺らは今、何してるんですか?」
「任務です」
 上田伍長が視線を上に向ける。斉刻地方というわりと田舎の方にあるにしてはモダンなマンションが目に飛び込んでくる。上田と中尉はそのマンションの前の生け垣に隠れつつ、ある部屋を監視していた。
「大佐を見張ることのどこら辺が任務!?」
 彼らが監視していたのは朝比奈大佐の自宅だった。
「大総統が任務と言ったところからです」
 一年経っても、どこにいても、相模大総統はまったく変わっていなかった。
「斉刻に来てからというもの、休日に大佐のマンションに押しかけても大佐は留守。少尉や軍曹に聞いたところ、一年前からそのような状態らしいのです。はたして大佐は休日に何をしているのか。調べないわけにはいきませんね」
「…ただ単に休日、おしかけて行って飯をたかるって楽しみがなくなったからやってるだけでしょう…?」
「何か?」
 上田のこめかみに銃口がピタリと当てられる。
「何も言ってません!」
「“しけい”」
 弾丸が上田の頬を掠めた。血が流れ出す。
「この程度で死刑!?」
「“死刑”ではなく“私刑”です。腹いせです」
「腹いせかよ!!」
「まぁ、そんなことは今どうでもいいですね」
 どうでもいいのかよ…と心の中でツッコミを入れて大佐の監視に戻る。
 玄関から手ぶらで大佐が出てきた。駐車場へは行かず、そのままマンションの敷地から出て行く。
「中尉、大佐動きましたよ」
「分かってますよ、そんなこと」
「早く行かないと大佐のこと見失いますよ」
「その通りです、少尉殿」
 中尉と上田の背後から二つの声が聞こえた。顔を見なくても誰かは明白なので二人とも振り返らない。
「……なんでいるんですか、少尉と軍曹」
「確か大総統は私と上田で監視しろと言っていたのですが…」
 二人の問いに対して佐伯少尉が即答する。もちろん市ノ瀬軍曹は無言だ。
「面白そうだから」
「仕事は…?今日は普通に司令部出勤すよね…?」
「まかせてきた」
 少尉と軍曹は斉刻司令部の第五部隊を指揮しているが、“少尉”という位にもかかわらず佐伯少尉に意見できる者は少なかった。理由は佐伯少尉の家柄のせいとも背後に常に軍曹がいるせいとも言われている。
「権力バンザイ…」
「何一人でブツブツ言ってるんですか、上田。置いていきますよ」
 中尉、少尉、軍曹はさっさと大佐を追って行った。まもなく彼らの姿が見えなくなる。
「またかよ!!」
 上田も必死で彼らを追いかけていった。






「た、大佐は…?」
「歩くの速っ!!」
「見失いましたね」
「その通りです、少尉殿」
 彼ら四人は必死に大佐を追いかけていたが、大佐は実は歩くのが速く、あっという間に見失った。
「ところでここはどこっすか?」
「山と森しか見えませんね。こんなところに大佐は一体何の用が…。というか休日に出かけるほど予定のある人ですか?」
 中尉がサラッとひどいことを言った。
「市ノ瀬、この辺は何かあったか?」
 佐伯少尉が一番地理に詳しそうな市ノ瀬軍曹に聞いた。市ノ瀬軍曹も淡々と答える。
「木造の建物が一つだけあります」
「こんな辺鄙なところに建物が!?」
「辺鄙でも何でも人っていうのは住めるものですね」
「確かこちらです」
 軍曹が歩き出した。他の人もついていく。やがて目の前に立派な木造の建物が現れた。門に掲げられた木の板に『道場』とだけ書いてある。
「何の道場なのかぐらい書けよ…」
 上田がブツブツと文句を言いつつ、皆で道場に面した森の中から道場内の様子を伺う。
「四、五、六……」
 中では数人の子供が掛け声にあわせて竹刀を振っていた。先生らしき人の姿も見える。どうやら剣道場のようだ。
「こんなところに剣道場なんてあったのか」
「そのようですね、少尉殿」
 上田や中尉よりも斉刻に長くいる少尉や軍曹もこの山の中の剣道場のことは知らなかったらしい。
「というか、私たちは大佐を探してるんですから、こんなところで油を売ってては…」
 中尉がそう言ったときに中で、休憩を告げる声がした。
「柳中尉、それならこの道場で大佐らしき人が来てないか聞いたらどうですか?」
「それはいいかもしれません」
 彼らが再び移動しようとしたとき、中から聞き覚えのある声がした。
「今日も鍛錬に励んでるかな?」
「朝比奈師範!今日、仕事はないんですか?」
「あぁ。たまにはうるさい部下から解放されたくてね」
「大変ですね」
「師匠が不在のこの道場を一人で支えてる師範代ほどじゃないさ」
 笑い声が道場内に響いていた。朝比奈師範は、どこからどう見ても大佐だった。今日は剣道用に袴をはいていたが。
「大佐…」
「こんなところにいたんですね」
「師範なんか取ってたんすねぇ」
 軍曹、少尉、上田伍長がそれぞれ好きに感想を述べる。中尉はというと…。
「ジェノサイド装填完了」
 自前のバズーカを持ち出し、照準を大佐に定めた。そして…。
「うるさい部下で悪かったですね」
 撃った。
 大佐がいた部分の壁が大破し、白い煙が舞っている。
「任務完了です」
「撃つところまで任務!?」












 違和感が!!いーわーかーんーがー!!
 もちろん自分で書いてるんですけどね!!大佐のね!!「朝比奈師範」が違和感バリバリですよ!!「朝比奈大佐」ならもう慣れたんですけどね、「師範」は違和感がありますね。
 ちなみに大佐の師範設定はずいぶん前から決まっていたりします。あの人、ある意味出稼ぎ労働者なんです。
 それにしてもいつもの事ながら、中尉は一体どこからジェノサイドを出してるんでしょうかね。
 次はですね…タイトル未定。多分、上田伍長がメインになっているのではないかと…。裏メインは軍曹です(笑)




2008年4月18日


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