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犀雅国陸軍軍事記録
第5話 犀雅国陸軍密偵作戦2


 パーティー当日。
 執務室で朝比奈大佐は朝から頭を抱えていた。そこになにやら荷物を大量に持って柳中尉が入ってきて大佐の目の前にその荷物を積み上げた。
「何してるんですか?大佐、ここに居るんでしたら仕事して下さい」
「…仕事したいんですけど…今夜のパーティーが…」
「ああ、そう、パーティーのことで大総統からいろいろ届きましたよ」
 そういうと中尉は大佐の前に積み上げた荷物の一番上をなんの断りもなくビリビリと開けた。中には黒いスーツが入っていた。次の箱にはネクタイが。その次にはワイシャツが。最後の箱には靴が入っていた。どれも上等そうな代物だ。中尉は思わずこんなものは大佐にはもったいないと考えていた。売ったらいくらするのか…。
「…どうもこれはパーティーに着ていけということらしいですね」
「はぁ…そっちの紙束は?」
「えっと招待状と大佐がどういう人物を演じればいいのかを長々と書いた紙ですね」
「招待状だけください」
 中尉が招待状を渡すと大佐は読み上げた。
「拝啓 板垣征一郎様。このたびIACで商人の為のパーティーを催させていただきます。このパーティーでは皆様に他の商人たちとの交流を深め商業の幅を広くしていただきたいのです。場所 日時 持ち物…。このIACってどんな団体ですか?インターナショナル…」
「Irresponsible association of commerce いいかげんな商業組合です」
「いいかげんなって…。そんなんでいいのか商業組合!」
「別にいいんじゃないですか?」
 紙束のほうを読んでいた中尉が不意にそこに書かれていることを声を出して読み上げた。
「板垣征一郎、29歳、妻優子、結婚5年目、子供はいない。武器商人で常に剣を持っている」
「えっ!ゆうこって優しい子で優子!?真逆!!」
 後ろから寒気が!またいつものパターンかと振り返ろうと思ったら…冷たい!冷たい手が首に触れてる!パワーアップしてる!!白衣の悪魔は日々パワーアップしていく!
「何か言いまして…?」
「ヒィ〜〜」
 中尉はそんな三浦軍医に対してもいつもどおり冷静だ。
「軍医の部屋でも大佐の声が聞こえたんですか?」
「そんなわけないじゃない。聞こえてもこんなに早く来れないわ」
 いや。軍医なら絶対できる!昔同じ時間に異なる場所で目撃されたと言うのを聞いたことがある!白衣の悪魔に不可能はない!…と思う。
「近くに来ていたのよ」
「どこから入ってきたんですか!?」
「大佐のことはほっといて、何か用があってきたんですか?」
「ええ。もうパーティーに行く時間になりますから」
 よく見ると軍医は春色のイブニングドレスを着ている。
「女を待たせるなんて男として最低ですよ」ニコッ
「…すぐに用意します」
 いざビクトリアを携えてパーティーへ!軍医に引きずられていく大佐の運命やいかに!








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